DT06-01 ➡ 第01の法則 一一 己を知る

トレーダーにとって、 自分がどのような人間であるか、あるいは何者であるかを知ることは極めて重要である。 
それがわかってはじめて、 マーケットでどのように行動すべきかを知ることができるのである。 
トレーダーの取引スタイルは自らの傾向、 好み、欲望、 恐怖といったものに完全に依存する。 
トレーダーが自分の心理的な性質に合わない取 引スタイルに無理やり自分を合わせようとするならば、 結果は惨憺たるものとなるだろう。 
例えば、 短期トレーダーの例を見てみよう。 このト レーダーは10日以上にわたって1つの銘柄を保有し続けることは拷問に近いと感じるかもしれない。 
この特性が変えようのないものであるな らば、2ヵ月以上の長期の保有を前提とする取引を行うことは大きな間違いである。 
トレーダーは、マーケットを通じて自分自身と戦うことに なってしまう。逆に、このことを知っていれば、このトレーダーは、より早く決着がつく可能性がある取引に絞り込むことができる。 
損失の頻 度は増加するかもしれないが、このタイプの取引が自分の性質に合っており、格段に望ましいと言える。結果として、 よりよい判断がなされる のである。 
ポイントはつかめたであろうか。 マーケット参加者としての自分が何者であり、 どこにいるのかを確認するための質問をいくつか挙げてみる ことにしよう。 
答えを見つけることができたならば、 自分が本質的にデイトレーダー (短期のトレーダー)に向いているかを判断することがで きるであろう。

  1. 忍耐強いか? 答えがイエスであるならば、 本質的には中期から長期のマーケット参加者である。 
    もし、 性根が忍耐強くないのならば、自分の感情的あるいは心理的な側面からは短期トレーディングのほうが向いていると言える。
  2. 時間を持て余していると不安を感じるか? 答えがイエスであるならば、 十分な時間をかければ、すべての事柄は結果的にはうまくいくと考え、またそれを信じる傾向がある。 
    これは本質的には中期から長期のマーケット参加者であることを意味する。 
    もし、時間が 無為にすぎることが我慢できないならば、あるいは時間の経過がなくとも物事を解決できると感じているならば、生来のデイトレーダー である。 
    3)時間が長くなると不安になるか? 取引を開始した直後に軽い不安感を感じるようであれば、間違いなくデイトレーダーである。 
    取引に際して、勝っていようが負けていようが、時間の経過とともに不安感が増大していくようであれば、 短期トレーディングが向いて いる。 
    株を買った直後にその場を離れ、 友達に電話をかけたり、サンドイッチをほおばったり、 新聞を読んだり、あるいは何かほかの用 事ができるようであれば、デイトレーダー向きではない。 
    以下の質問の答えを知ることによって、超短期、短期、中期、長期のどの時間軸に注力すればよいかを判断することができる。
  3. リスク許容度はどの程度であるか? ある取引で250 ドルの含み損を抱えるとその取引は失敗であると感じるならば、適切な取 引スタイルは短期である。 
    1回の取引で1000ドルの含み損を抱えながら、それでもなお株価の上昇を期待することができるならば、 長期の時間軸が適当である。
  4. 潜在的に大きな利益を上げることができるならば、多額の損失も辞さないか? これが当てはまるのであれば、 長期の時間軸が適当である。 
    3)損失を最小限に抑えながら、少額の利益を追求することに抵抗はないか? この質問に対する答えがイエスであるならば、生来のデイトレーダーであり、 超短期の時間軸が最適である。 
    以下の質問は、トレーディングの手法や技術の選択に役立つものである。
  5. 自分はギャンブラーか?
  6. 自分の手持ち資金を大きく賭けるのが好きか?
  7. 少額の利益を積み重ねるのが好きか?
  8. ケチか?
  9. 価格と品質のどちらに重きを置くか?
  10. 少額の損失も許すことができないか?
  11. スリルは、勝つことと同様に重要か? 
    このリストをまだまだ続けることができるが、 言いたいことは理解してもらえたと思う。



DT06-02 ➡ 第02の法則 一一 敵を知る

己を知ることは、トレーダーとしてまず取り組むべきことであるが、 同時に、 誰が敵なのかも知らなければならない。 既に何度か述べたよう に、トレーディングは戦争である。 
しかし、 誰との間での戦争なのだろうか? トレーダーにとって、 敵は主に他のトレーダーやマーケット参 加者である。この点について少し考えてみよう。 
株式を買うということは、 誰かが取引の反対サイドにいて、 その株式を売っているのである。 
換言すれば、 誰かが反対サイドのトレーダーが 買おうとしている銘柄を処分しようとしているのであり、そのトレーダーを利用しているのである。 
そして、 彼は自分が反対サイドのトレー ダーよりも賢くて熟練していると思っている。 彼はいったい誰か。 彼こそが敵なのである。
ほとんどのマーケット参加者がこの点を理解できていない。 どういうわけか、たいていのトレーダーは、なんとなくマーケット全体から株式 を買っていると思い込んでいる。 
彼らは、どこかに株券の山が積んであって、 自分たちが買おうとしている銘柄は自由に手当てができるとでも 思っている。これは間違いである。 
株式を買う時は、 それは誰か別の人から買っているのである。 株式を売る時は、 誰か別の人がそれを買って いくのだ。 問題はその誰かを識別することができるかということである。 
その誰かが何を考えているのか、 動機は何か、考え方や感じ方はどう か、そしてその時の感情はどのようなものなのかを知ることができるだろうか。 
それを知ることができないのならば、 自分と相手のどちらが正 しいかをどのように判断すればよいのだろうか。 
NASDAQ でトレーディングをする際には、NASDAQ のメンバーであり顧客勘定および自己勘定で取引をするマーケット・メーカーを相手とする取引が多いことを認識しておくことが重要である。 
主要なマーケットメーカーとしては、ゴールドマン・サックス、メリルリンチ、 ファースト・ボストンなどがある。 
馴染みのある名前とは裏腹に、NASDAQで取引をする限り、 彼らは決して友人にはなり得ない。 通常、彼 らが我々の取引の反対サイドにいるのである。 
我々が買っている時には、 彼らが我々に売りつけている。 我々が売っている時には、 彼らが我々から買いつけている。 
彼らは、 我々が買いたいと思っている銘柄を提供してくれる親切な人々なのだろうか。 とんでもない。 
彼らは自分たちが 正しく、 我々が間違っていると思っているのである。 彼らは我々とは逆方向に賭けているのであり、このことは彼らが我々の敵であることを意 味する。 
しかし、最大の敵は、どこか遠くのトレーダーでもマーケット参加者でもなく、己の中にいることを忘れてはならない。 己こそが最大の敵な のである。 
我々自身が成長と発展の最大の障害なのであり、 そして、 我々自身しかそれを乗り越えられないのである。 
克服すべき心の奥に潜む 悪魔は、すべて我々の内面に存在しているのであり、 それらは我々自身の一部である。 
トレーダーとして成功したいのならば、この最大の敵を 打ち負かし、生まれ変わらなければならない。 
しかし、 我々自身を征服する前に、まず、 我々自身のことを知らなければならない。 
「失敗は天体の運行のせいではなく、 我々自身のせいである」とは、シェークスピアが何世紀も前に述べたことである。 
以下に、己の敵を知るための方法 を示しておく。

  1. 「誰が取引の相手方なのだろうか」と自問することなく、 取引を行ってはならない。 
    この質問は、 自分の取引の反対サイドには、 常に敵がいることを自覚させるものである。 
    トレーディングを成功させるためには、まず誰が反対サイドにいるのかを知り、 それから彼 らよりもうまくやることを学ばなければならない。
  2. 自分以外の者に対して文句を言ってはならない。 トレーダーとして敗北しかかっているのならば、 損失の最終的な原因は自分自身にある。 
    確かにほかのトレーダーやマーケット・メーカーは敵ではあるが、 彼らは些細な存在である。 自分自身 (心の奥に潜む悪魔)を 征服したトレーダーはその他のものも征服している。 
    トレーディングを極めることは自分自身を極めることの副産物なのである。



DT06-03 ➡ 第03の法則 一一 早いうちに何らかの教育を受ける

会計士や弁護士になろうとする者は、 教育の重要性を十分に理解しているようである。 
世界的ではないとしても、全米で高等教育の必要性を 求める声はかまびすしい。 
この学習熱への高まりの結果として、 織物から化学、 電気工学に至るまでありとあらゆるものを教える学校がある。 
しかし、不思議なことに、ことトレーディングとなると、たいていの人々はトレーディングに関する教育は必要ないと思っているようである。 
トレーディングがこの世の中で最も困難な作業の1つであることを考えれば、こういった認識は全く理解に苦しむ。 
しかし、たいていの マーケット参加者は、いわゆる気合いの入ったトレーダーであっても、マネーのことになると教育に関する信奉が薄れるようである。 
マーケッ トが自らの経済的な破綻を招き得る存在であることは関係がないかのようだ。 
たいていの人々は、 何の指導も受けずに思いきって飛び込むか、 さらにひどい場合には、誰か他人に委ねて飛び降りさせるのである。 
トレーディングで成功するように学ぶことで、大方の夢に倍するような報 酬がもたらされるとしても、あまり興味がないようですらある。 
闇の中を何の指導もないままに独力で歩む必要があると、 多くの人々が感じて いるようだ。 
平均的な人々は何らかの教育を受けずに弁護士や医者になろうとは夢にも思わないだろうが、ことトレーディングに関してはそういった発想 は存在しないというのが現実である。 
どういうわけか、 彼らはマーケットに何も考えずに参加し、ニューヨーク証券取引所 (NYSE) のプロや NASDAQ のマーケット・メーカーや我々のようなプロに対峙して勝てると思っている。 
言うまでもなく、この認識は真実からはほど遠い。 
我々は13年以上もトレーディングを行っている。 トレーディングに関し、 現在の水準に達するのは決して容易なことではなかった。 
現在の状 況に至るまでの苦しみと苦痛は今でも思い出せるし、今でもそういった苦痛を感じることもある。 
知らない人が突然、 家の食卓から食べ物をさ らっていくようなことを、誰が黙って許すと思うか。 そんなことはあり得ないのである。 
我々は5年間にわたってプロのトレーダーやマーケットメーカー、 ファンドマネジャーを教育してきて、 トレーディング教育の必要性を強く感じている。 
教育がトレーディングを極めるための最初の鍵であることは疑いの余地がない。 
我々は長いことトレーディングという名の ゲームを行ってきて、 勝者になる権利を得るためには、その対価を支払わなければならないことを学んだのである。 
ハーバード大学に授業料を 払わなければ、ハーバード大学の教育は受けられないのだ。 授業料は払わなければならない。 」
そして、 トレーダーが授業料を支払う方法は、進 んで支払うか、 意思とは関係なく支払うかの2通りしかない。 
マーケットはお見通しである。 どちらを選択するかを決断しなければならない。 進んで授業料を支払うことを勧める。 
何らかの教育を受けるためのステップを以下に示しておく。

  1. トレーダーへの教育を実施している質の高い会社を探す。 これを実行することによって、 成長途上期の試行錯誤と損失を繰り返す期間を短縮できる。 
    我々も含め、優れた教育プログラムを提供している事業者を以下に示す。 
    (a) Pristine.com (http://www.pristine.com/) トレーディング教育のロールスロイス。 1日から3日間の入門コースから6ヵ月間 の育成コースまで多様で厳格なコースを用意している。 
    より長期のプログラムとしては、 プリスティーンの指導プログラムがある。 我々 の注力するところは、どのようにしてマーケットで生活の糧を得るかを教えることである。 
    生徒は、 我々が日々利益を上げてきた手法と 技術を実践的に学ぶ。 
    NASDAQ レベルIIの使用方法や、チャートの読み方、ニュースを受けてのトレーディングの方法などと併せて、 注文の執行方法を学ぶ。 
    適切な思考もトレーディングで成功するためには決定的に重要なポイントである。 
    少額ではあるが毎日安定的に 利益を上げることのできる超短期トレーディングから、より大きな利益を目指す2日から5日の時間軸でのスウィングトレーディング、
    そして富を蓄積する目的での中期トレーディングまで、さまざまなトレーディングスタイルを指導する。 卒業生の多くはプロのト レーダーとして成功している。 
    卒業生の中には教鞭を執る者もいるし、 個人指導を行う者もいる。 
    Pristine.com は、 トレーダーとして 成功しようと思っている者ばかりでなく、成功したトレーダーから学びたいという者を引きつけている。 
    (b)コーナーストーン証券一早い時期に電子取引に特化した会社の1つ。 デイトレーディングの世界でプロになろうとしているならば、コーナーストーン社に興味を持つこともあるだろう。 
    同社は全米に 20 以上の支店を有しており、そこでトレーディングをしたいと 思う者には最高の広範なプログラムを提供している。 
    コーナーストーン社は教育を非常に重視しており、 同社は米国でもトップクラスの トレーダーを輩出しているという点で評価されている。 
    そこの指導教官のすべてとは言わないが、ほとんどは我が社の卒業生である。 
    © トレーダーズ・エッジネット (http://www.daytrading.com/) 無駄のない、 充実したトレーディングの殿堂。 
    ベストセラー となった『The Electronic Day Trader』の著者であるマーク・フリードファーティグとジョージ・ウエストの両氏が経営するトレーダーズエッジネット社は、。 
    プロのように取引することを学ぼうとする者に対し、 1週間の講座を提供している。 
    この講座は、 NASDAQ レベルIIの基本的な解釈、ウォッチャー社のソフトウェアの特訓、NASDAQ において非常に高速な取引執行を可能にする
    DOS ベースのプラットフォームなどを指導してくれる。 同社の兄弟会社であるブロードウェイ トレーディング社には非常に優れたトレー ダーが多い。
  2. 内容のあるトレーディング教本を読む。 トレーディングやマーケットでの動き方を扱ったマーケット関連の書物は山ほどあり、その数も幾何級数的に増加している。 
    残念なことに、これらの書物の大半は曖昧な学問的な理論や基礎中の基礎に毛が生えた程度のことし か書かれていない。 
    最高の書物は、トレーダーが適切な考え方を持てるようにしてくれるものである。 トレーディング手法や技術はもち ろん重要であるが、ほとんどの書物にはその辺のところにさえ言及していない。 
    したがって、 考え方と技術的な要素の双方をカバーする 書物は純度の高い金のようなものである。 
    成長途上にあるトレーダーの役に立つであろう10冊の本を以下にあげておいた。 
    10冊すべて が2つの要素を兼ね備えているわけではないが、 どれも読む価値のあるものばかりである。 
    特に 『How I Made $2 Million in the Stock Market』は2つの要素を含んでおり、 我々の考え方と取引の方法に大きな影響を与えたものである。

【推薦図書】
(1) HowIMade $2 Million in the Stock Market, by Nicholas Darvas (Lyle Stuart/Paperback/1986)
(2) Trading for a Living, by Dr. Alexander Elder (John Wiley Sons/Hardcover/1993)
(3) Japanese Candlestick Charting Techniques, by Steve Nison (Prentice Hall Press/2nd edition/Hardcover/2001)
(4) How to Make Money in Stocks, by William J. O’Neill, (McGraw-Hill/3rd edition/Paperback/2002)
(5) The Disciplined Trader, by Mark Douglas (Prentice Hall Press/Hardcover/1990)
(6) Winner Take All, by William Gallacher (Probus Professional Pub/revised edition/Hardcover/1993) (McGraw-Hill/Paper Back/1997)
(7) Reminiscence of a Stock Operator, by Edwin Lefver (John Wiley Sons/Paperback/1993)
    『欲望と幻想の市場―伝説の投機王リバモア』 (林 康史訳、 東洋経済新報社, 1999年)
(8) The Electronic Day Trader, by Marc Friedfertig and George West (McGraw-Hill/Paperback/2000) (McGraw-Hill/Hardcover/ 1998)
(9) How to Get Started in Electronic Day Trading, by David Nasser (McGraw-Hill/Paperback/2001)(McGraw-Hill/Hardcover/ 2000)
(10) Strategies for the On-line Day Trader, by Fernando Gonzalez and William Rhee (McGraw-Hill/Hardcover/1999)



DT06-04 ➡ 第04の法則 一一 己の最も貴重な資源を守る

投資銘柄の格付の引き下げ、 業績の下方修正、ネガティブな経済指標などによって、
自分のポジションを含めマーケット全体が下落するよう な事態に対処せざるを得ない状況に追い込まれることがある。 
損失はすべてのマーケット参加者にとって、 常に存在するものであり、また避け られない現実ではあるが、決して心地よいものではない。 
損失が自分のコントロールの効かない要因によってもたらされた場合は、 特にそうで ある。 
金融市場から不確実性の要素を完全に排除することはできないのであり、 したがって、 常に防衛的な売却の戦略を立てておかねばならない。 
我々はこの戦略を 「保険戦略」と呼んでおり、極端過ぎるほどに常日頃から強調していることである。 
我々の最も貴重な資源である当初の資金を守るためには、できる限りのことをしなければならない。 
当初の資金が枯渇してしまえば、 すべて 終了、 破滅なのである。ことの重要さが理解できたであろうか。 何よりも資金を守ることが重要なのである。 
何度も言うように、プロのトレー ダーは1つの買いに対して必ず2つの売り水準を設定しなければならない。 
売り水準の1つは買いの水準よりも高い水準に設定するものであり、利食いの目安となるものである。 
そして、 我々が厳しい現実の世界にいる限り、ポジションが不利になった場合に備えた売り水準も設定しておかねばならない。 
人間というものは元来楽観的なものであり、 あまりに単純過ぎることも往々にしてあるために、この 「防衛的な売却」 はトレーダーの興味を ほとんど惹かないのである。 
これがほとんどの場合に利益の額が損失の額よりも小さい理由である。 プリスティーン社のトレーダーは、少なく ともこの点については人間的であることは許されない。 
簡単な話、 そうでなければ資金が続かないのである。 
取引をする時には、必ず3つの価格を念頭に置いておいてほしい。 つまり、買い入れ価格、利食いの価格、防衛的なストップロスの価格である。 
これが当社流の保険である。 その中でも防衛的なストップロスの価格が、少なくとも取引開始直後は最も重要であることを常に認識 しておいてほしい。 
この価格がマーケットにおける生命線なのである。 ストップロスは自分が間違っていた場合の最大損失額を示すものである。 
そして、最も重要なことは、ストップロスがトレーディングにおいて破滅を導く株価急落から自分を守るものだということである。 
ストップロスによって損を出す頻度は増加するかもしれないが、 損失の額は総じて少額であり、 長期的に見ればとるに足らないものである。 
我々の言葉を信じてほしい。 我々は大きく負けたこともあるし、 それほどでなかったこともある。 負けは少額であるに越したことはない。 
いか なる代償を払ってでも、貴重な資源を守らなければならない。 
2日から2週間程度の時間軸のスウィングトレードと数分から数時間の時間軸のデイトレードについて、 どのようにプリスティーンの保険を用いるかを以下に示しておく。

スウィングトレードの場合

  1. 最初にポジションをとる時は、3つの価格を設定する。 購入価格は日足チャートに基づいて決定される。 
    2)購入後、防衛的な売却価格を当日の安値と前日の安値のいずれか安いほうから 1/16 ポイントから 1/8 ポイント低い価格に設定する。 
    具体例で見てみよう。 X株を20ドルで購入したとしよう。 当日の安値は 19.25 ドルであり、 前日の安値は18.50 ドルである。 
    前日 の安値のほうが当日の安値より安いので、 防衛的なストップロスを18ドル7/16 か 18 ドル 3/8 に設定するのである。
  2. ここで設定した当初のストップロスは、ポジションをとった日を含め少なくとも2営業日は変更しない。 
    2営業日が経過した後は、含み益を守るためにストップロスを上方修正することが多い。

デイトレードの場合

  1. 最初に、 日中のトレードに関するポジションのとり方に従ってポジションをとる。 この購入価格は5分足か15分足のバーチャー トに基づいて決定する。 
    2)購入後、防衛的な売却価格を5分足か15分足のいずれか購入の根拠としたチャートの安値から1/16 ポイント低い価格に設定する。 
    すなわち、5分足に基づいてポジションをとったならば、購入時点の5分足の安値に対して設定し、 15分足に基づいてポジション をとったならば、 購入時点の15分足の安値に対して設定する。



DT06-05 ➡ 第05の法則 一一 物事を複雑にしない

ホーリーグレイル
聖杯を死に物狂いで探し求めるトレーダーは、 「やたらと複雑なもの」 に不必要に飛びつくことが多いようである。 
対数であったり、神経 学的な考え方であったり、混乱を極める数学的なトレーディング式であったりするが、それらは基本から逸脱している。 
ここで基本とは、メジャー・トレンドラインであるとか、 支持線・抵抗線、 出来高の増減、 主要な移動平均線、 チャートパターンのたぐい である。 
西洋人は、 複雑なものでなければうまく機能しないと考えがちである。 我々の見方は、この誤った認識とは正反対である。 
単純なアプ ローチから生まれる明晰な行動に対する確信は筆舌に尽くし難い。 
我々の講座の生徒は皆、この基本をしっかりと身につけ、それを絶え間なく 修正していくことの価値を学ぶのである。 
今この場で、 基本を確実に習得する決心をしてほしい。 単純明快であることが明晰さの母であること がすぐにわかるであろう。 
以下の質問のいずれか1つにでも該当するのであれば、 トレーディングに対するアプローチが複雑すぎる可能性が 高い。

  1. あなたのトレーディング手法や技術は 12歳の賢明な子供にも理解できるか。 
    2)あなたのアプローチは数学的な計算式を必要とするか。 
    3)取引に際して計算機が必要か。
  2. 取引を実行するために3つ以上のソフトウェアが必要か。
  3. 取引戦略を紙に書くとしたら5分以上必要か。 
    これらの質問は複雑さを確認するものである。 できる限り単純さを維持するように努めてほしい。



DT06-06 ➡ 第06の法則 一一 己の損失から学ぶ

マーケットを極めることは苦難に満ちた旅路である。危険と損失、試行錯誤は向上心のあるトレーダーが乗り越えなければならないものであるが、
それにあえて挑む者の心に穴を穿ち、 背骨を打ち砕きかねない。 
驚くべき明敏さでマーケットを動き回るトレーダーについて、 偶然自らの才能に気づいたのではないかとか、天賦の才能なのではないかとか、
多くの人々が安易に決めつけてしまうことは残念である。 それは真実か らはほど遠い。 苦痛。 損失。 挫折。 混乱。 不確実性。 矛盾。 
これらの状況は、 目標とすべき高みに達するためには、 教育が必要であることを示 すものである。 
今日、 成功を享受しているトレーダーは皆、かつて敗者の苦痛と苦しみを経験しているのは間違いない。 
人間というものは、 成功からは学ぶ ことはなく、むしろ失敗に終わったものから学ぶのである。 
我々大人は火に触れてはいけないことを知っているが、それは子供の時に火傷の経 験をしているからである。 
あらゆる負け方を経験してから、 勝ち方を学ぶのだ。 
ここで質問がある。 マーケットで失敗した時、それにどう対処しているか。 失敗の経験が無駄になり、 無視され、 傷口はうずくままにされ、 時間とともに忘れ去られているようなことはないか。 
そう、 失敗が、 将来に向けて行ってはならないことの貴重な例として活用されているであ ろうか。 
損失の中にこそ、 探し求めている成功への秘訣が隠されているのである。 
いったんかがまないと、 前に大きく跳ぶことができないことを忘れ ないでほしい。前に跳ぶために、まずかがむのだ。 
これは自然の法則である。これが成功の青写真であり、それがトレーディングを極めるため の方法なのである。 
いったん後ろに下がらなければ、 前に跳ぶ力は弱々しいものになってしまう。 損失を被っても、 嘆いたり、 泣き言を言った りするのはやめよう。 
むしろ、 喜ばなければならないほどではないか。 その損失は、適切に対処することによって、 将来の成功へ導く天使にな り得るのである。

POINT

トレーダーにとって最も価値のあるツールは、巧みなマーケット指標でも魅力的なトレーディング手法でもない。 
簡素ではあるが効果の大き い、損失を記録した日誌である。 すべての損失の記録をつけることによって、 損失の傾向や頻繁に生じる損失が見つけやすくなるのである。 
例えば、5連敗の内容を検証し、5回のうち4回はポジションをとるのが遅過ぎたからだとわかったとしよう。 
この貴重な発見は、 適切に対処で きれば、勝率を劇的に上昇させる鍵となる。 
より早い段階でポジションをとること、あるいは買おうとする銘柄が上昇している場合に深追いし過ぎないことに注力すればよいのである。 
数年前、私は日誌を検証し、興味深い発見をした。 慎重な検証の結果、 私の損失の78パーセントは株価が8ドルから15ドルの範囲内にあ る銘柄で生じていたのである。 
その発見をした日のことを昨日のことのように覚えている。 その驚くべき発見は、日誌をつけていなければ到底 なし得ないものであった。 
検証によって、 私が低位株に手を出さなければ、 少なくとも利益が2倍になっていたという単純な事実が明らかに なった。 
失敗を詳細に検証することによって、 多くの素晴らしい発見があるのである。 失敗を記録する日誌は、 自分が誰であるか、 何者であるか、そ してどこにいるかを明らかにしてくれる。 
時間的推移と併せて用いれば、 自分が何処に向かっているのか、あるいは、向かっていないのかも教 えてくれる。私は決して日誌を置いて家を出ることはない。 
家の中にいても日誌を手放すことはない。 5歳になる私の娘は転ぶことによって歩 くことを学んだ。 今では、 彼女は十分に学習している。 
私も、 まず負けることによって学んだのである。 今では、 私は、世界中のトレーダーの 卵に、自分のように勝つ方法を教えている。 勝利は自然とやってくるのである。 
正しく負ける方法を学びさえすれば、 夢が現実となるのを待つばかりなのである。



DT06-07 ➡ 第07の法則 一一 トレーディング日誌をつける

トレーダーの行動の中で最も価値のあるものの1つに、トレーディングにおける失敗を日誌に記録することが挙げられる。 
我々の生徒と ニューズレターの購読者のほとんどは認識していることと思うが、 適切に対処することができれば、 失敗 (人生においてもマーケットにおいて も)は一段の高みに至るための試金石になる。 
マーケットにおける失敗に関する詳細な記録を残すことは、 自分が何者なのか、どこに行こうとしているのかを知る手助けとなる。 
7年ほど 前になるが、この単純な作業によって、 私のトレーディングの正確性は想像だにしないレベルにまで高まった。 同じことが読者にも起こり得る。 
以下に、私がどのように作業を行ったかを示すことにする。 
まず、証券会社からの無残な計算書をかき集めて、負けた取引について約定日、 銘柄コード、 購入価格、 売却価格、手数料合計、
取引の理由などの砂を噛むような詳細事項を書き記すのである。 そして、 チャートを用いて負けた取引を検証する。 
私は 「The Executioner」(http://www.executioner.com/) のチャート機能を用いている。 
詳細に吟味することによって、 繰り返し同じような間違いを犯していること に気づいたのである。 
そこで、 これらの間違いを「ポジションをとるのが遅過ぎた」 「売却が早過ぎた」 「持ち過ぎた」 「欲を出し過ぎた」 「神経 質になり過ぎた」 「ストップロスを無視した」 といった
異なるカテゴリーに分類することにした。 
この作業を終えると、 私が何者であるか (駄目になりそうな初心者) がはっきりしてきて、
この状況を脱して別の人間 (成功したプロ)になるためには何をすればよいかがわかってきた。 
ほかの失敗はさておき、 最も頻度の高い失敗に注目し、 排除することに努めたのである。 その失 敗が完全になくなるまで休みはしなかった。 
それが済むと、 次に頻度の高い失敗を排除することに取り組んだ。 そして、 その次の失敗を排除し、 さらに次に取り組んだのである。 
10ヵ月経って、 最後に残された失敗に取り組んでいる時に、 それまでの7ヵ月間、 何の意識もないままトレーディングで利益を上げていた ことに気がついた。 
私は失敗を排除することに集中しきっており、利益を上げていることには全く気づかなかった。 まさに勝利は自然について くるものだということの証ではなかろうか。 
トレーディングの成功は、その勝ち方によってではなく、 負け方によって決まってくるのである。 勝ち方は正しいが負け方が間違っているト レーダーは、最終的には過去の人となる。 
勝ち方は正しくないが負け方が正しいトレーダーは、 最終的に自らが正しいことが示されるまで生き 残ることができるのである。 
正しく勝ち、正しく負けることができる、 たぐいまれなるトレーダーは、 お金の使い途を考えなければならないほ ど儲けるようになる。 
この失敗を検証する作業を行うことによって、 何をしてはならないかを学び、 利益が膨らんでいったのである。 
日誌をつけることである。そして、自分のトレーディング能力が向上していくのを確認してほしい。 
日誌をつけるという単純な作業がいかに トレーディングにおける最大の悪魔を排除する助けとなるか、 そして結果として、 自分の勝つ能力がいかに増強されるかに驚くことだろう。 
以下に、トレーディング日誌の付け方を示しておく。

【取引 No.1】
約定日 : 6/15/99
マーケット・レーティング: 買い
銘柄コード: PSFT
取引量 : 100 株
取引のサイド: 買い
取引スタイル:スウィングトレード
買い入れ価格: 18.50ドル
ポジションをとった理由 30 分の買いルール
当初のストップロス 17.50 ドル (前日の安値よりも下方に設定)
目標株価: 20.50 から 21 ドル (200日移動平均線を試す動き)
売却日 : 6/16/99
売却価格: 16.75ドル
売却理由 当初のストップロスを下回ったこと
損益結果: 1.75ドル、 つまり、 175 ドルの損失 (手数料抜き)
【失敗その1】
引き金を引くことを恐れたこと。 買い入れに際して躊躇したことによって、買い入れ価額が買うべき水準よりも 1/4 ポイント高くなってし まった。この失敗だけで25ドルのコストが発生した。
【失敗その2】
ストップロスを無視したこと。 17.50 ドルのストップロスにおいて、 希望という名の敵に屈した。 砂の中に頭を突っこんで、反発の可 能性のほうが高いと信じようとした。この失敗によって、 さらに 3/4 ポイント、 つまり75ドルのコストが発生した。
【失敗その3】
該当なし。
このような取引を日誌につけることによって、 トレーダーが必要とする情報がつまびらかになる。 引き金を引くことに対する恐怖とストッ プロスを無視するという、ここで取り上げた2つの失敗は、このトレーダーが楽観的ではなく懐疑的であり、 そして、 最も懐疑的でなけれ ばならない時に、 無意味に楽観的であったことを示すものである。これらは通常は気づくこともなく、やりすごしてしまうほど普通の状況なの である。しかし、このように失敗を日誌につけることによって、こうした隠された事柄が明らかにされ、 自分が何者であるのか、 何処へ行こう

としているのかが明確になるのである。
この2つの失敗のパターンが続くようなら、このトレーダーはこれらの2つの感情を封印し、
例えば、以後10回の取引においては決してここれらの失敗を犯さないようにすることを唯一の目的とするのである。 
失敗を1つだけ取り上げても、2つ同時に取り上げても構わない。 
いずれ にせよ、トレーダーの関心は、利益を上げることにあるのではなく、 どの取引においても、あらかじめ設定したストップロスを割り込まない ようにすることにある。 
それがストップロスを前にして狂信的に売ることであったとしても、ただ1つの取引たりともストップロスを割 り込むことを許してはならない。 
むしろ、すべてのポジションが落ち込んで、この悪魔 (危険な癖) の背骨を打ち砕くことを望むべきでさえある。 
また、当初ポジションをとるに際しては、トレーダーは極めて機械的に行動しなければならない。 
いったん買いのシグナルが出たのであれば、 トレーダーの仕事は、 あらゆる思考を振り払って取引を実行することでなければならない。 
繰り返しになるが、それが狂信的な作業であったと しても、いかなる代償を払ったとしても、すべての取引について実行しなければならない。 
最終的な効果は利益を上げることにあるとしても、 ここでは必ずしも利益が目的なのではない。 
むしろ、ここでの目的は、トレーダーを永久にマーケットに参加できなくする恐れのある2つの 「悪魔」をやっつけることである。 
損失を被った取引すべてを日誌につけることによって、 自分自身に奇跡が起こるのである。 
我々はこれを実行して暫く後に自分たちのトレー ディングが一段高いところに昇華したことを身をもって体験している。 
「損失日誌」 をつけることは、 我々の生徒にも課していることである。 どうか試してみてほしい。 間違いなくトレーディングに大いに役立つ。



DT06-08 ➡ 第08の法則 一一 低位株にばかり注目してはならない

自分の失敗を1つ挙げろと言われれば、株価水準にとらわれて取引をしたことである。 私が何百回となく繰り返してきた大失敗である。 
初心者の失敗として、ストップロスを守らないことに次いで、これが最も犠牲者を多く出しているものであろう。 
私は、 その衝動がどこから来 て、なぜ存在するのかを理解している。 しかし、その衝動は間違っており、 すべてのトレーダーはそれが間違っているということを認識しなけ ればならない。 
この衝動の主な要因は、資金に限りがあることである。 資金に限りがあることによって、多くのトレーダーは株価が低位にある銘柄を選好し がちである。 
しかし、 それは間違っているのだ。 株価水準が高くなるに従って、 勝つ確率も上昇するということを認識しなければならない。 
次の事例を考えてみてほしい。 10ドルの株価が2ドル動くためには、20パーセントの上昇が必要なのである。 
そのような上昇率は、1年間か かって実現したとしても喜ぶトレーダーが多い。 実際、プロのファンド・マネジャーの6割は、年間でもそれほどの利回りを上げてはいない。 
それにもかかわらず、 1日や2日で、 それだけの上昇率を期待するトレーダーが多いのだ。 
それが不可能なことかといえば、もちろん、 可能である。 それならば、何が問題なのだろうか。 
ここで問題は、資金に限りのあるトレーダー が、まさに高い勝率を必要とする者なのだということであり、また、 低位株にばかり注目することが、 勝率の低い世界での勝負だということである。 
勝率が高いという理由だけから言っても、 高位にある株を少ない株数で取引するほうが望ましい。 次の事例を考えてみよう。 
株価が60 ドルの銘柄が2ドル上昇するのは、どのくらい容易であろうか。 答えは、よほど容易であるということである。 
60ドルの株価が2ドル上昇す ることは、 1日でも十分に可能である。 10 ドルの株価が2ドル上昇するのはまれで、翌日の新聞で取り上げられられるほど珍しいことなのである。 
トレーディングというゲームはほぼ全面的に確率に依存する。 ある意味で、 トレーディングは単純ではあるが、 執行の難しい 「ナンバーズ」 のようなものである。 
そして、 成功の確率が最も高いものがどこにあるかを認識できないトレーダーは極めて短命に終わる。 極めてエキサイ ティングだということは確かだ。 
しかし、本書を読んでいるということは、読者は単にエキサイティングである以上の何かを求めているのだろう。 
もしそうならば、 高水準の株価の銘柄で、 頻繁にポジションをとるべきである。 それらはより大きな働きをみせてくれるはずである。 
そもそも、「支払った価値のものしか手に入れることはできない」 と、母親に教わらなかっただろうか。 

POINT

ここでの戒めは、 低位株に全く手を出してはならないというものではない。 実際、 我々が新人の社内トレーダーを訓練する時には、リスクが 小さいという理由で、 低位株を用いる。 
しかし、新人トレーダーが訓練を受け、マーケットの機能やマーケットのでたらめな動きを活かすトレーディング戦略などについて十分に理解した後は、
徐々に取引の対象銘柄を株価水準の高いものへと変えていく。 また、 我々が 「アキュム レーションアプローチ」を実践する場合には低位株を用いる。 
アキュムレーションアプローチとは、大きな動きが見込まれる場合、 その1 日から2日前にかけて、比較的大きなポジションをとるアプローチをいう。 
これは高度な戦略であり、 社内のシニア・トレーダーが実践するものである。 
低位株も時にはいい目をみさせてくれることもあるが、たいていの場合は、 株価が高位にある銘柄のほうが頻繁に果実をもたらす。



DT06-09 ➡ 第09の法則 一一 分散投資をしてはならない

プロの投資家の間で最も頻繁に用いられる用語の1つに 「分散投資」というものがある。 
今日では、「分散投資をしなければならない」とい う口上を少なくとも10回やそこらは聞かないことには、証券口座を開くことも、
ファイナンスに関する本を読むことも、投資顧問会社の人間 と会うことも、あるいはフィナンシャルプランナーとビールを飲むことさえできない。 
我々は優先株 (preferred stock)と家畜(livestock) の違いを知る前に、「1つの籠の中にすべての卵を入れてはならない」という考え方を叩きこまれるのである。 
しかし、時が経つにつれて、こ の教義の有効性に疑問を抱くようになり、そしてその過程において興味深い発見をするのである。 
熟練したトレーダーならば、 あらゆる事柄に 疑問を抱くべきである。 
最も基本的な公理だと認識されているものに対しても、 実際にはどうかを検証すべきである。 その結果については大き な驚きを受けることであろう。 
奇妙なことに、十分に分散投資を行うことによって個人の進歩が損なわれるのである。 
また、 トレーダーが正しい時には、分散投資を行うこ とによって収益は減殺されるのである。 
もちろん、トレーダーが間違っている時には、分散投資を行うことは大きな損失に対する防衛的なバッファーとなる。 
この事実は興味深い。 分散投資は損失を回避するものではなく、 また利益を上げる確率を増加させるものでもないのである。 
分散投資は、トレーダーが間違えた時のクッションを厚くするだけなのである。 
読者がどうだかは知らないが、 我々は負けた時の痛手を小さくすることよりは、正しい判断をすることの確率を高める (つまり、その頻度を 高める)ことのほうに興味がある。 
我々の言うことを間違って理解しないでほしい。 分散投資には確かに価値はある。 他方で、これまでに繰り 返し述べてきたように、正しく負けることはトレーディングの重要な要素である。 
トレーダーに才能がある場合には、分散投資は意義が少ない ということなのだ。 要するに、十分に分散投資を行うことは、才能のなさをカバーするにすぎない。 
分散投資の概念は損失を受け入れやすいも のにするということなのである。 分散投資をするに適した時期はあるが、 まずは完全な勝者になることに注力されたい。 
考えてもみてほしい。 10回のうち8回勝てるトレーダーに分散投資が必要だろうか。 
トレーディングを極めたトレーダーは可能な限り勝率を高めることに注力すれ ばよく、分散投資はただ単に、 勝率を低くするだけなのである。

POINT

分散投資にも一理あるという事実を軽んじるつもりはない。 しかし、 短期トレーディングという若干毛色の異なる投資行動に関しては、分散 投資は過大評価されていると認識せざるを得ない。 
熟練したトレーダーが自らの正確さを最大限に活かすべくポジションを集中させる時ばかりでなく、初心者も、1つ1つの取引ごとに理解度を深めていくほうがよい。 
成長途上にあるトレーダーが最も避けなければならない行動は、判 断の機会を増やすことによって、 頻繁に犯す失敗を増幅させることである。 
まず当初は、 判断の機会が少ないほうが望ましい。 しかし、 十分に 成長した後でも、これは当てはまる。 
理解が深まり、 判断の正確性が高まってくれば、 分散投資というセーフティネットは不要になってくる。 
トレーディングの世界においては、才能の増大は分散投資の必要を縮小させるのである。



DT06-10 ➡ 第10の法則 一一 時には何もしないことが最良の行動である

長年にわたって、 世界中の何千人ものマーケット参加者と話をし、カウンセリングをし、指導し、そして講義してきた結果、初心者のトレー ダーが陥る問題は次の2点に集約されることがわかった。 
第1が 「忍耐力の欠如」 であり、 第2が 「時には何もしないことが最良の行動であ ると認識できないこと」 である。 
保有銘柄を売却した翌日か翌々日に株価が急騰したという経験は何回あるだろうか。 
そして、 それらの売却のうち、 あらかじめ設定していた 売却水準での売却は何回あり、逆に自分が不安になったり、
飽きたり、あるいは他のことに邪魔されたりしたことによる売却は何回あったであ ろうか。 
ポジションをとる前に売却戦略を描いておくことは熟練したトレーダーの証である。 
しかし、 熟練したトレーダーであっても、 株価の 動きに何ら問題ないにもかかわらず、 事前の売却戦略を破って早過ぎるタイミングで売却してしまうことはある。 
そうした傾向が自分にあるな らば、よく注意してほしい。 その傾向が続くならば、 トレーディングの世界では生きていけない。 
2つめの問題点は、飛び抜けて重大な問題であり、「利益を上げたり損失を計上したり」という不安定な状況を招く要因である。 
利益と損失 の往復運動は、それだけで1冊の本が書けるほどである。 しかし、取引をすべきでない時を知ることは、この往復運動を終了させる魔法の薬 となる。 
たいていのトレーダーは 「何もしないこと」 の便益を認識できないでいる。 
たいていのトレーダーは、 自分に十分実力があれば、何か することができる、あるいは何らかの銘柄について取引ができるという誤った認識を持つのである。 
この認識は幼稚であるばかりでなく、 害と なり得るものである。
プロのトレーダーというものは、単なるギャンブラーというよりも、 ポーカーのプロのようなものである。 正しくオッズを評価できるポー カーのプロには十分な勝ち目がある。 
真実は、 何もしないことが時には最良の行動となるということであり、 「何かをすること」 と 「何もしな 「いこと」 の対極をいつ、
どのようにうまく行き来すればよいかを知ることができれば、 トレーダーとして稀有な存在に上りつめることができる。 
どうか、この2点を心に留めてほしい。 その価値は、本書の価格を数段上回るものである。

POINT

熟練したトレーダーの最も価値のある能力は、 適切な時に 「不作為」 を押し通せることである。 何もしないことは成功を極めたトレーダーの みが使いこなせる有効な手段である。 
それは何万ドルもの損失を防ぐだけでなく、 何万ドルもの利益を上げることさえ可能にする。 
私は、成長 途上にあるトレーダーが、 日中の早い時期にそこそこの利益を上げながらも、 結局、終わってみれば利益をすべて失ってしまうという例を見て きた。 
彼らは、適切な不作為の便益を理解することができないがために、 一所懸命稼いだ利益を使い果たしてしまう。 
取引で勝つたびにもっと 利益を上げることができると思い、無理をしてしまうのである。 連勝している時に行動しないことなど、 彼らの意識の彼方にある。 
風向きが悪 く家でじっとしていなければならない時があるということは、避けようのない事実である。 時には、 自分の打順であってもバッターボックスに 向かうべきではない。 
時には、 丸一日、 あるいは丸一週間ほど、 取引をしてはならない。 それをマスターすることができれば、 トレーディング は莫大な利益をもたらし得る。 
休むことがよりよい選択肢であり得ることを早い時期に学ぶことができないトレーダー予備軍がトレーディング を極める域に達するのは難しい。



DT06-11 ➡ 第11の法則 一一 厳かに撤退する時期を知る

移り気なマーケットにあって、 適切なタイミングで様子見に転じる能力は、プロのトレーダーの証である。 
あまりにも多くの無知なマーケッ ト参加者が、「スーパートレーダーは環境がいかに悪くともマーケットに立ち向かい成功裏に征服する」 と思っているようである。 
これは真実 からはほど遠い。熟練したトレーダーは、平均以上のパフォーマンスは大きな利益を上げたからではなく、損失を抑えたからであることを理解 している。 
そう、 トレーディングで成功するためには適切なタイミングでマーケットから手を引くことが必要不可欠な要素なのである。 
次の事例を考えてみてほしい。 長期投資家が過去14年間のリターンの30パーセントを叩き出した20日間にポジションを持っていなかった としよう。 
悲惨な話だ。これはバイ・アンド・ホールドのアプローチを正当化し、強力に支持するものとなるのだろうか。 いや、そうではない。 
その主張には、その逆の議論が見落とされている。 同じ投資家が過去14年間で最悪の20日間に相場を休むことができていれば、利益は2倍 以上になっていたのである。 
最悪の時期を避けることは、 最高の時期をものにすることに比べて、 より利益に貢献するものである。 
以下に述べることを強調しておきたい。 最悪を避け、 最高の利益を上げることができるのがスーパートレーダーなのである。 
オッズが有利で はない時にはマーケットを傍観し、 「逸失利益は、 損失よりもましである」 という事実に心を安んずることである。 
以下に述べる事例のいずれか1つが該当するようであれば、厳かにマーケットから撤退すべき時期であるのかもしれない。

  1. 長く続いた連勝の後に2連敗した―トレーダーは連勝の直後に自滅することによって損失を被ることが多い。 換言すれば、最悪 の失敗は最高の成功の後に生じることが多い
  2. S&P 先物のマーケットが暴落しているS&P 先物はマーケットの主要な先行指標であり、 注意深いトレーダーに対して、マー ケットの変調を事前に通告する
  3. 自分がゲームに参加していないような気がし、 不安であり、 混乱しており、 集中できないでいるが、 その理由が定かではない― トレーダーは時を経ることによって、
    いわゆる「勘」 を発達させる。 この勘は長年の経験によって磨かれるものであるが、 感情的かつ直 観的な回路を通じて機能するものである
    よく発達した勘を身につけている熟練したトレーダーは、これらの「ヒント」 を尊重するので ある
  4. 事前に設定したトレーディング戦略がマーケットの突発的な出来事によって水泡に帰した自らのトレーディング戦略に横槍が 入った時には、常に一歩引いて様子を見ることが最良の選択である。 
    予想外のネガティブなニュースが発表されたり、一歩引かざるを得 ない状況になった時に、多くの初心者トレーダーは抗う
    しかし、これはしばしばギャンブルに賭けることになり、結果的には多額の損 失につながるものである
    5)気分が悪い―トレーダーはプロのスポーツ選手のようなものである。 彼らは自らの精神的、肉体的な健康を良好に保たなければ ならない
    気分が悪い場合には、能力の限界までパフォーマンスを高めることはできない
  5. 精神的に疲れているトレーダーの最強の兵器は平穏な精神状態である。 精神的に平穏でないならば、健全なトレーディング判 断を行うことはできない
  6. 個人的な問題を抱えている個人的な問題を抱えている場合には、精神的に影響を受け、その結果としてトレーディングの判断
    も影響を受ける。 マーケットは、 我々が誰であるのか、 何者であるのかをほぼ完璧に写し出す鏡なのである。 
    奇妙なことに、 トレーディ ングを通して、我々の個人的な問題が明らかにされるのである。



DT06-12 ➡ 第12の法則 一一 言い訳は一文の得にもならない

「人は、言い訳をすることができる。 また、稼ぐこともできる。しかし、この2つを同時に行うことはできない」
すべての分野において、この洞察に満ちたコメントは極めて真実であろう。 
アクティブなマーケット参加者として、 日々、 不確実性の陰と複 雑さに直面しなければならない。 
安定的に利益を上げることへの飽くなき探求という点で、 過去に苦労して稼いだ資金を注ぎこんで、我々は文 字通り真のリスクをとっているのである (十分に考えたうえでの話ではあるが)。 
「困難」という言葉では、とてもトレーダーの苦境を表すことはできないが、そういう苦境にあっても真のトレーダーは行動するのである。 
それを思うと、驚嘆を覚えずにはいられない。 トレーディングにおける成功への道程は決して容易なものではない。 
我々は皆、それを十分に認識 している。それでも、何千人ものトレーダーが生き残っており、 毎日戦っているのである。 
我々は皆、安定的な利益を上げるという一段の高み に至る困難な道のりを歩むことを望む。 多くが脱落する一方で、レースを完走する者もいる。 
常に、 初心者トレーダーは金銭的な破滅という運 命にもてあそばれる。 毎日、 彼らは行く道に立ちはだかる心の中の悪魔と戦うのである。 
トレーダーとして成功するために、 とてつもない困難 と極限の窮状を経験してきているにもかかわらず、文句一つ言わない者がいるということに我々は驚きを覚える。 
そして、 そういう人々が結局 のところはマネーを、換言すれば 「おいしいマネー」 を儲けるのである。 
私は、気が滅入るような連敗に打ちのめされ落ち込んでいる時 (これは誰にでも経験のあることであるが)には、
人生やトレーディングにおける成功が容易だと約束してくれた者など1人もいなかったことを自らに言い聞かせる。 
それでも、言い訳をすることは簡単である。しかし、 言い訳をしたところで、 一銭も儲かりはしない。 私は真のトレーダーを敬愛する。 
彼らは勇気とは畏れることであることを認識しており、 「と にかく行動してしまう」のである。 言い訳は敗者のためのものである。 
本当のマネー、 「おいしいマネー」 は、 それを認識している者の懐に入 るのである。 白鯨のような獲物を追い求めるならば、言い訳ではなく、 食べる準備をしておくべきである。

POINT

モビーディック
トレーディングは完全なる自由を手に入れるための最後の砦だ。 法律事務所や会計事務所のパートナーは詰まるところ顧客のために働いてい るのである。 
医者は患者のために働いている。 トレーダーの成否は自らの内面によるものであり、 誰からもそれをとやかく言われることはない。 
そう、トレーダーは失敗を誰かと共有したり、 誰かのせいにしたりすることはできない。 
一言でいえば、 トレーダーは自分だけの世界に住んで いる。 山も谷もすべて自らの責任だ。 
しかし、すべての行動が自己責任で、 逃げ隠れできないことから、 敗れたトレーダーは言い訳に走りがちだ。 他人を非難すれば、 心理的に失 敗を受け入れやすくなる。 
情報誌を責めてみたり、アナリストのせいにしてみたり、 ウォール街のシステムを批判したりすることは、トレー ダーが自分自身に責任があるという事実から逃げようとする行動の一端である。 
こういった言い訳をする輩になってはならない。 彼らのたどる 途は明らかである。 最終到達地点は敗北でしかない。 
マーケットにおけるすべての行動に責任を持ってほしい。 誰も自分に強制することはでき ないのだという事実をしっかりと受け止めてほしい。 
最終的な判断はすべて自分だけのものであるということを心に刻み込んでほしい。 
最高に優れたトレーダーは、自己に対する信頼に基づく世界、 そして完全なる独立を得た世界に住む。 
その世界においては、 損失を招いた失 敗はすべて自分自身のせいであるが、同時に、素晴らしい利益もすべて自分自身に帰属するのだ。 
そして、 言い訳をしないトレーダーは結果的 に損失よりも利益を多く得ることになる。