DT05-11 ➡ 第1の大罪――すぐに損切りできないこと
自分の腕一本で身を立て、 何百人ものトレーダーを教えてきたプロのトレーダーとして、 我々は生徒たちから次のような質問をよく受ける。
「熟練したトレーダーが最も頻繁に失敗することは何ですか?」
我々の答えは、 「早期に損失を受け入れられず、 損切ることができないこと」である。 我々はトレーダーの最も貴重な資源は元手であると考 えている。
トレーダーが元本の目減りを防ぐために可能な限りの手段を講じなければ、 完全なる失敗が待ち受けている。
早期に少額で損失を実 現することが、元本の減少を確実に防ぐための唯一のアプローチであり、手段である。 早い段階で、しかしコントロールされた損失を実現する 必要がある。
同時に、トレーディングを続ける限り、 損失は必ず存在し続けるものであるという事実を受け入れる必要がある。おそらく、これ を理解することが最も難しいのではないだろうか。
苦しんでいるトレーダーの大半は、 損失から逃れることばかりに腐心している。
彼らは、 恒常的に、ブローカーを替え、 トレーディング・ サービスを替え、 情報紙を替え、 トレーディング・システムを替え、 祈るのである。
そして、 損失状況を確認することもせずに、 信じられない
ホーリーグレイル
ような満足感を与えてくれないかと神頼みをするようなアプローチで 聖杯を捜し求めるのである。
一言で言えば、そんなことは不可能であ る。
なぜならば、 トレーディングで成功するか否かは、 人生における成功と同様に、いかに損失をコントロールするかによって決まるのであり、
いかに損失を回避するかによって決まるのではないからである。
熟練したトレーダーになることを心の底から望むのであれば、 損失をコント ロールするというプロの負け方を学ぶことが重要な鍵となる。
それが身につけるべき技術であり、大きな利益を達成するための道であり、 それ によってトレーディングを長く続けることが可能となる。
損失を少額に抑制することによって、利益は自然とついてくるのである。
POINT
すべての損失は、癌細胞のように自らの資金を食いつくし、生活を破壊させる危険性を秘めている。
したがって、 トレーディングを長く続け るためには、癌が発生したら早急に取り除かなければならない。
すべての損失は、当初は少額である。 その時が損失をコントロールする時、あ るいは完全に損切ってしまう時であり、痛みはほとんど感じることはない。
この損失という癌の転移を許してしまうことがトレーダーにとって 重大な問題なのである。 損失が大きくなってしまうと、 トレーダー自身もトレーダーの行動能力も弱まってしまう。
まさしく癌のように、損失 の拡大はトレーダーの知力を奪い精神力を侵し、 そしてトレーダーを奴隷と化してしまうのである。
成功したいのであれば、 自分の将来を奪い かねない病気には十分注意しなければならない。
DT05-12 ➡ 損切りができない罪をいかに排除するか
損切りに失敗するという、最も危険な敵の餌食にならないための手段を以下に示す。
1)状況が悪化した場合、 どこで救助するかをあらかじめ決めずに、ポジションをとってはならない。
「損切りの水準をあらかじめ決 めずにポジションをとってはならない」 ということである。 損切り水準を決めずにポジションをとることは、ブレーキのない車で坂道を 全速力で下るようなものである。
結果として死なないかもしれないが、そんなことは死の恐怖を楽しみたい者だけがするものである。
2)常に、あらかじめ定めた水準で損切りしなければならない。 これは改めて言うまでもないことであるが、 熟練したトレーダーで
あってもこれを実行できる者は少ないので、あえて述べておく。
なぜ、 損切りを実行することがそんなに難しいのか。 それは、損切り水 準で売ることは、 自分が間違えていたことを認めることになるからである。
損切りは自尊心を高めることにはならないし、 自信を深める ことにもならない。
しかし、真に優れたトレーダーは、この困難を乗り越えることを学んでいるのである。
彼らは目にもとまらぬ早さで 損切りをするエキスパートなのである。
彼らは、 自分の思った通りに動かない銘柄に対して寛容ではなく、 最初にトラブルの兆候が現れ た時点でそのポジションを手仕舞うのである。
我々は社内のトレーダーに、ポジションをとった銘柄はただ1つの職務を遂行するため に雇われた使用人だと思うようにと指導している。
その職務とは上昇 (下落) することである。 使用人が仕事をサボった場合にクビにす るように、その銘柄が職務を遂行しない兆候を見せた場合には、すかさずクビにすべきである。
我々は社内のトレーダーに対して、 期待 に応えない銘柄については、時と場合によっては、 損切り水準に達しないでもクビにするくらい厳しく接するように指導している。
3)どうしても損切りのルールを守ることが難しい場合には、 ポジションの半分を損切る癖をつけることから始める。 信仰のように厳 格に損切りを実行するには時間を要するものである。
損切り水準を設定し厳格にそれを守ることは損失を甘んじて受けるということであ る。これが損切りに対して前向きになれずに苦痛を伴う理由である。
躊躇せずに損切りができないトレーダーにとっては、ポジションの 半分を損切るという代替策がよほど容易であろう。
なぜならば、それは葛藤する2つの衝動、 つまり下落銘柄のポジションを外したい という衝動と下落銘柄の反転に期待したいという衝動の双方を満足させるものだからである。
問題を半分にすることで、 トレーダーの明 晰さと精神的な集中は飛躍的に改善することが多いようだ。
心理的に逆境の苦しさが緩和され、 したがってトレーダーは気分的に自信が 持てるようになるのである。
残りの半分をどうするかという問題は依然として残るが、 問題の半分は解決しており、 次の策を講じること は容易になっているはずである。
DT05-21 ➡ 第2の大罪―利益を勘定すること
前述したように、オスカー・ワイルドは 「若かった頃には、お金が最も大事なものであると思っていた。
今、 歳をとって、 まさにそうである ことがわかった」 と言った。
すべての短期トレーダーの目的と関心は利益を上げることである。 快感、行動、 勝利のスリル、そして敗北の苦悩でさえもが魅力にはなる。
しかし、富を劇的に増やすことができる可能性こそが、ほとんどのマーケット参加者の心に火をつけ、 向上心を刺激するのである。
端的に言え ば、マネーを儲けることがトレーディングや投資の原動力なのだ。 利益が第1の目的であり、 また、第1の目的であるべきなのだが、いった んポジションをとったならば、 利益のことは忘れなければならない。
もう少し説明しよう。 ある取引の益が膨らんだとか損が膨らんだとかを常に見ていることは破滅的な行動であり、大きく利益を上げる機会を 奪い去るものである。
この利益を勘定する行動は、 恐怖を増幅するばかりでなく、 その時々の不確実性を助長し、 適切なトレーディング手法に 集中することを邪魔するものである。
そう、最終的にどれだけ利益を上げることができるかを決定するのは、適切なトレーディング手法なので ある。
少額の利益を失うのが怖くて大幅な上昇の直前に利食ってしまった経験は何回あるだろうか。
損失によって神経が麻痺してしまい、 まさに損 切らねばならない時に動くことができなかった経験はどうだろうか。
自分が何をすべきかではなく、どこにいるかに集中し過ぎると、 知性と合 理性を欠いた速断や反射的な行動に陥りがちである。
むしろ、 いついかなる時でもトレーダーは自らの選択する手段が健全であるかどうかに注 意を払わなければならない。
「ポジションをとるタイミングは適切であるか」 「精神的な、あるいは物理的な損切りの水準は適切に設定されてい るか」「株価目標をいくらに設定したか。
そして、その目標を達成した場合には、 どのような行動をとるか」。 こうした質問はトレーダーが常に 自問しなければならない問のごく一部である。
トレーダーの行動は分単位の株価の上下動ではなく、熟考されたトレーディング計画に基づいた ものでなければならない。
優れた手法は自動的に利益に結びつくのである。
POINT
利益を勘定することは、あまり勝った経験のないトレーダーが犯す罪である。
こうしたトレーダーが幸運にも少額の利益を目の当たりにする と、それを失う恐怖によって目は飛び出そうになり、 手は震え、 息が荒くなってしまうのである。
時には、そのお金はまだ自分のものではない にもかかわらず、 それを当てにして、そのポジションを閉じざるを得なくなるまでお金を使ってしまうこともあるようである。
トレーディング の最中にスクルージ (ディケンズ 『クリスマス・キャロル』に出てくる守銭奴)のようにお金を勘定する癖は、
大きな利益の可能性を奪い去る だけでなく、 利益を失うことに対する恐怖を助長し、 また感情のバランスを失わせ、 破滅的な行動を招くことになる。
戦争 (取引) 終結以前に 戦利品(利益)の胸算用を始める兵士(トレーダー) は、 最も些細な問題を重要視しているのである。
うまく戦って戦争に勝てば、 戦利品は自 然とついてくるものであるということが、 彼らには認識できないのである。
戦利品に集中し過ぎることは、 戦争に対する関心を散漫にする。 そ して、 戦争に対する関心を失った兵士は往々にして戦利品ばかりか自らの命を失うのである。
DT05-22 ➡ 利益を勘定する罪をいかに排除するか
我々は社内のトレーダーに対して、利益や損失ではなくトレーディング技術に注力するように指導している。 うまく練られた戦略によって取 引を終了できるように訓練している。
利益を勘定する罪によって、 大幅な利益の可能性を奪い去られてしまった場合には、以下の手段を実行し てみてほしい。
1)毎回の取引に際して、ポジションすべてを手仕舞うための水準を2つ設定する。 まず、 現在値より下に売却水準を1つ設定する。 いわゆるストップロス (損切り) である。
そして、 2つめは現在値より上に設定するのである。 これは株価がそこまでは上がるであろ うと判断した水準であり、 株価目標として位置づけられる。
具体例で見てみよう。 X株を20ドルで400株購入する。 ストップロスを 19 ドルに設定する。これは心づもりだけでもいいし、 実際に指値をしてもよい。
そして、 22 ドルに株価目標を設定する。 これは心の中 の目標値である。 ここでのポイントは、すべての取引で1つの購入価格に対し2つの売却価格が存在するということだ。
つまり、ス トップロスと目標価格である。 ストップロスは防御のために用いられ、 目標価格は利食いに用いられる。
- ストップロスに達するか、あるいは目標株価に達するか、 いずれかが起こった場合にのみ売却する。
このルールをしっかりと守 ることによって、トレーダーは自らの命運を、 欲や恐怖ではなく、自らの戦略に託すことができる。
前述の例を続けて見ることにしよう。 X株が19ドルまで下落すれば、そこで売却し400ドルの損失となる。
逆に22ドルまで上昇すれば、 そこで売却し800ドルの利益とい うわけである。
3)どうしても当初の売却水準に達するまで我慢できなくなった場合には、その時点でポジションの半分を売り、 残りは当初の戦略通 りとする。
例えば、 X 株が21ドルまで上昇したとしよう。 この時点で、 含み益は400ドルであるが、 当初の戦略では売却をすることは できない。
しかし、400ドルの利益を失うには惜しいと思い始める。
もちろん800 ドルの利益のほうが望ましいが、利益を勘定する癖 によって普通に考えることができなくなっており、
同時に400ドルの利益が霧散するかもしれないという恐怖は、 それを利食いたいと いう強い欲求となる。
こうした場合は、 21 ドルで200株売却し200 ドルの利益を確定し、 残りの200株については当初の戦略通りとす るのである。
こうすることによって、 売却したいという衝動を満足させると同時に、 当初のトレーディング戦略も維持することができる。
これらの3つのステップは、利益勘定の罪を完全に消し去ることはできないが、少なくとも軽くすることはできる。
DT05-31 ➡ 利益を勘定する罪をいかに排除するか
我々は社内のトレーダーに対して、利益や損失ではなくトレーディング技術に注力するように指導している。
うまく練られた戦略によって取 引を終了できるように訓練している。
利益を勘定する罪によって、 大幅な利益の可能性を奪い去られてしまった場合には、以下の手段を実行してみてほしい。
1)毎回の取引に際して、ポジションすべてを手仕舞うための水準を2つ設定する。 まず、 現在値より下に売却水準を1つ設定する。
いわゆるストップロス (損切り) である。 そして、 2つめは現在値より上に設定するのである。
これは株価がそこまでは上がるであろ うと判断した水準であり、 株価目標として位置づけられる。 具体例で見てみよう。 X株を20ドルで400株購入する。
ストップロスを 19 ドルに設定する。これは心づもりだけでもいいし、 実際に指値をしてもよい。 そして、 22 ドルに株価目標を設定する。
これは心の中 の目標値である。 ここでのポイントは、すべての取引で1つの購入価格に対し2つの売却価格が存在するということだ。
つまり、ス トップロスと目標価格である。 ストップロスは防御のために用いられ、 目標価格は利食いに用いられる。
- ストップロスに達するか、あるいは目標株価に達するか、 いずれかが起こった場合にのみ売却する。
このルールをしっかりと守 ることによって、トレーダーは自らの命運を、 欲や恐怖ではなく、自らの戦略に託すことができる。 前述の例を続けて見ることにしよう。
X株が19ドルまで下落すれば、そこで売却し400ドルの損失となる。 逆に22ドルまで上昇すれば、 そこで売却し800ドルの利益とい うわけである。
3)どうしても当初の売却水準に達するまで我慢できなくなった場合には、その時点でポジションの半分を売り、 残りは当初の戦略通 りとする。
例えば、 X 株が21ドルまで上昇したとしよう。 この時点で、 含み益は400ドルであるが、 当初の戦略では売却をすることは できない。
しかし、400ドルの利益を失うには惜しいと思い始める。
もちろん800 ドルの利益のほうが望ましいが、利益を勘定する癖 によって普通に考えることができなくなっており、
同時に400ドルの利益が霧散するかもしれないという恐怖は、 それを利食いたいと いう強い欲求となる。
こうした場合は、 21 ドルで200株売却し200 ドルの利益を確定し、 残りの200株については当初の戦略通りとす るのである。
こうすることによって、 売却したいという衝動を満足させると同時に、 当初のトレーディング戦略も維持することができる。
これらの3つのステップは、利益勘定の罪を完全に消し去ることはできないが、少なくとも軽くすることはできる。
DT05-32 ➡ 時間軸を変更する罪をいかに排除するか
時間軸を変更するという大罪は許されるものではない。 トレーダーがこの罪を犯せば必ず自滅するのであり、この大罪は完全に排除されなけ ればならない。
いったん習慣になってしまえば、それを打ち破ることは極めて困難である。 この大罪に立ち向かうために有益なガイドラインを 以下に示しておく。
- ある時間軸をもって取引を開始したならば、その時間軸の範囲内で売却するよう計画することである。 例えば、 日足チャートに基 づいてX株を買ったとしよう。
ここで、 個々の取引には1つの購入水準に対し売却水準が2つあることを想起してほしい。
日中の チャートを用いてデイトレードを行うトレーダーは、 特にこの失敗を起こさないように用心しなければならない。
5分足や15分足の チャートを用いるならば、 売却水準についても同じチャートを用いて設定しなければならない。 途中で時間足や日足チャートに変更する ことは自己否定の行動である。
- 買い持ちの時にストップロス (第1の売却水準)を下方修正 (売り持ちの時には上方修正) してはならない。
これは、時間軸 を変更する罪を犯そうとしている兆候である。 例えば、 日足に基づいて、 20ドルでX株を買ったとしよう。
同じチャートに基づいて、 ストップロスと利食いの水準を設定する。
仮に、 X株が下落し、 ストップロス水準の19ドルに近づいたとしても、ストップロス を18ドル、あるいはそれ以下に下方修正しようという誘惑に屈してはならない。
利益を守るためにストップロスを上方修正すること は、適切に行う限りにおいて問題ない。
しかし、 ストップロスを下方修正することはストップロスの利点を殺すものであり、当初計 画していた行動をとることに対して怖気づかせるものである。
いったん、このような行動をとってしまうと、それを繰り返してしまい、 最終的にはストップロスの意味がなくなり、 破滅してしまうのである。
この2つのガイドラインは、時間軸を変更するという大罪を犯さないように護ってくれる。
DT05-41 ➡ 第4の大罪―より多くを知ろうとすること
トレーディングという胸踊るゲームで、 我々はアクティブなマーケット参加者として、想像し得る限りの障害と対峙しなければならない。
毎日、無数のいわゆるエキスパートたちによる誤った見方によって引き起こされる混乱を乗り越えなければならない。
延々と続くさまざまな企業 の業績発表や途切れることのないニュースの中から、価値があるものとないものを見極めていかねばならない。
そして、自らを見失わないよう に管理していかねばならないのである。
トレーダーを悩ませる心の中の悪魔は、 我々が見ることができ、感じることができ、 そして触ることができるものよりも、よほど危険なもの なのである。
心理的な弊害の中でも最大のものは引き金を引くことに対する恐怖である。 読者は、 ある株を買おうと思いながらも、 株価があと 1/8 ポイント下落するのを待とうと思ったことはないだろうか。
連敗していた結果、 再び負けることを恐れるあまり、躊躇し、 再考し、様子を 見てしまった結果、 大幅な株価上昇を逃してしまったことはないだろうか。
こういった事例における元凶は確実性に対する欲求、 あるいはより 多くを知ろうとする欲求なのである。
行動を起こす前に万全を期しておこうとすることはごく自然なことである。 しかし、 より多くを知ろうとせずに知的に行動できる者のところ にお金は集まるのである。
マーケットは期待が先行する場であり、大幅な上昇は事実関係が明らかになる前に生じてしまう傾向がある。
ポジ ションをとる前に、 より多くを知ろうとする者は、 常に出足が遅く、 負けるべくして負けるのである。
より多くの情報を知ろうとすることにと らわれないトレーダーは自由に行動することができる。
不確実性の何たるかを本当に理解することができれば、チャートを読む側ではなく、 チャートを形成する側にまわることができる。
ポイントは、 トレーダーとして確実にマーケットに対する安心感を求めてはならないということ だ。すべての事実関係を知ることができたころには、 収益機会など存在しないのである。
POINT
ウォール街では、「噂で買って、 事実で売れ」 という格言がある。
しかし、 より多くを知ろうとするトレーダーは全く逆の行動をとらざるを 得ない。
つまり、事実で買うのである。 噂の段階、 あるいはテクニカルアナリストが調査段階と呼ぶ段階では、すべての事実を知ることはで きない。
不思議なことに、 その段階に収益機会があるのである。
もし、 事実を収集し、 それに基づいて行動すればよいのであれば、あるいは、
すべての事実が明らかになるまで待っていればよいのであれば、すべての人々がウォール街で成功することができるだろう。
より多くのことを 知ろうとすることは破滅を招く大罪である。 それは行動すべき時に不作為を、そして何もすべきでない時に行動することを促すのである。
この 罪はトレーダーの収益機会を盗み取る泥棒のようなものであり、 買わねばならない時に売り、
そして手を出してはならない時に買わせることに よって、トレーダーを恒常的に間違ったサイドに置くのである。
2週間後に発表されるマイクロソフト社の業績が好調なものとなるかどうかを 思案しているとしよう。 その答えを待っていては間違いなく出遅れるのである。
FDA (米食品医薬品局) が新薬の認可を行うだろうか。 その認 可のニュースを待っていては賢明な取引を行うには遅すぎるのである。
株価は支持線でサポートされるだろうか。 そんなことは誰にもわかりは しない。 我々にできることは十分に検討されたトレーディング戦略を信頼して行動することだけである。
200日移動平均線によって株価は上値 を抑えられるだろうか。 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
我々は確率に基づいて行動するのであり、 予言者ではないのである。 すべての事実が明らかにならないと行動できないトレーダーが成功することはない。
DT05-42 ➡ より多くを知ろうとする罪をいかに排除するか
より多くを知ろうとする欲求によって取引の開始が遅れたり、絶好の取引機会を逃したりするようであれば、以下に示す行動をとることで病 を排除しなければならない。
1)よいニュースを受けて買うことに対しては、極めて消極的であること。 悪いニュースを受けて売ることについても同様である。
プ ロは噂に基づいて買い、事実に基づいて売る習性があり、 好材料の出た銘柄は一瞬跳ねるかもしれないが、 そこで揉み合い、 下落に転じ る(それも時には急激な下落となる)のである。
この事象は一般的にはニュースリバーサルといわれるものであり、 初心者が陥りやす い罠である。
企業が好材料を発表するに際して、そのニュースがどのようなものであるか、あるいはどのような内容を含むものであるか を、足の速い資金に知られないようにすることは極めて難しい。
結果として、足の速い資金はニュースが発表される前に既に当該銘柄の ポジションをとっているのである。 好材料は初心者の間に、 我々が 「うわーっ効果」 と呼んでいる効果を引き起こす。
「うわーっ! X 社が好材料を発表したぞ。 買わなければ」 という具合である。
既に相当程度のポジションを積み増しているプロは初心者の買い玉を利用 して自らのポジションを軽くしていくのである。
機関投資家などの大口投資家がロングポジションを手仕舞うためには大量の買い手が 必要となるのである。
大口で売るべき玉を保有している投資家にとっては、 初心者が慌てて買いに入ってくる状況は大歓迎なのである。
「さぁ、いらっしゃい。 こっちの水は甘いよ」 というわけである。 決してそんなはずはないのだ。
- 買いの判断、 売りの判断には、チャートを用いること。 既に見てきたようにチャートは嘘をつかない。 実際、ニュースには騙され ることが多い。
株価は好材料を受けて下落することがあるし(特に、 そのニュースが期待通りである場合)、
逆に、 悪材料を受けて上昇 する(特に、 そのニュースの発表前に大幅に株価が下落している場合) こともある。
しかし、いずれの場合においても、 チャートを正し く解釈すれば、 大口のプレーヤーが何をしているかがわかるのである。
3)もし、より多くのことを知ろうとして躊躇しているようであれば、 少し立ち止まって、「これから知ろうとしていることは、取引 に必要な情報なのか、
それとも安心を得たいだけなのか」 と自問自答してみること。 この質問は問題を浮き彫りにする。
適切な水準にス トップロスを設定している状況において、 なぜ株価がストップロスを目指して下落しているのか、その理由を探す行動は単に安心を 求めているにすぎない場合が多い。
それ以上知る必要はないし、 なぜ下落しているのかを知る必要もない。 事実は、 ただ株価が事前に設 定したストップ・ロス目指して下落しているにすぎない。
トレーディングに関して、事実以上のことを知る必要はないのである。
DT05-51 ➡ 第5の大罪―過度に自己満足に陥ること
マーケットが敵意をむき出しにすることもなく、すべてがうまくいっているように見える時に、 不注意によってすべてを台なしにしてはなら ない。
連勝によって懐具合が温かくなったならば、利益を維持するために、 そしてその利益を得ることを可能にした知的な精神状態を維持するために、可能な限りの手を尽くさなければならない。
非常に残念なことではあるが、 連勝するとガードが甘くなるということは、すべてのト レーダーが経験することである。これは自己満足によって徐々に意識が散漫となることに起因する。
しかし、 トレーダーとして生き残りたいの であれば、この極めて普遍的な悪癖に陥らないようにしなければならない。 すべてが順調である時にこそ、 警戒心を強めなければならない。
最 大の失敗は最大の成功の陰に隠れていることを学ぶのである。
長期にわたって連勝すれば、 ちょっと休んで勝利の甘い香りに浸るべきである。
ポーカーのプロも、 時に応じてポーカー・テーブルを離れて チップの枚数を勘定するものだ。
POINT
野球においてもヒットが連続した後にスランプに陥るように、 トレーディングにおいても連勝の後に大きな損失が続くことが多い。
それはあ たかもマーケットが1、2回の取引でまとめて損失を与えるべく、 連勝中には損失を与えないようにしていたかのようでさえある。
我々は、 数 学的な確率に逆らおうとしてはならないと教えている。 社内のトレーダーが長期にわたって連勝しているならば、 少し注意深く行動するように 指導している。
我々は、彼らが過度に自己満足に陥るという大罪を犯さないように指導している。
多くの初心者は理解することができないので あるが、それは長期にわたって連勝している間に彼らが慣れ過ぎたマーケット環境が変化している可能性があることを認識できないためである。
実際、多くの場合、 マーケット環境は変化しており、マーケットにおける確率も変化しているのである。
あるトレーダーが5日間にわたって 連勝したとしよう。この間にマーケットも力強く5連騰している。
この時点でマーケットは短期的には明らかに行き過ぎであり、2日から3日 の息抜きを必要としている。
このトレーダーが取引を始めた日のマーケットとは異なるのである。 マーケットの質は変わっており、 その確率も 変化している。
しかし、 まさにこの瞬間が、 自惚れたひよっこトレーダーがポジションを大きくし一儲けを狙いにいく瞬間なのである。
自らの 連勝を可能にした環境がもはや存在しないということを認識できなかった結果、 若造は無謀な行動をとり、それまでに稼いだ利益をすべて失う リスクを冒すのである。
トレーダーが安心感を覚え、 自己満足に浸り、 自惚れるようになった時には、マーケットの反転は近い。
そもそも彼ら が自惚れることができたのは単純にマーケット環境によるものだったのである。 我々の言葉を信じてほしい。
そのようなマーケット環境は長続きはしない。
DT05-52 ➡ 自己満足に陥る罪をいかに排除するか
連勝の後には、以下に示す行動をとることによって、 少しの間でもよいから、 一歩引くことを学ばなければならない。
1)ポジションの量を半分にする。 通常の取引ロットが1000株であるならば、 500 株にポジションを減らすのである。
たいていのト レーダーは全く逆の行動をとるという重大な失敗を犯すのである。 連勝したことによって自信をつけたトレーダーは取引のロットを大き くしてしまう。
彼らは連勝が終わろうとしている時にロットを大きくしてしまうのである。これが連勝中に稼いだ利益を1回か2回の 取引で失ってしまう理由である。
少額のロットで稼いだ利益を、多額のロットで失うことだけは避けなければならない。 ポジションの金額を半分にするべき時は、4連勝から5連勝した後である。
2)取引の頻度を減らす。 1日に4回取引をするのであれば、それを2回に減らすのである。 トレーダーが損失を被り始めた時に限 りこの方法を選択することを勧める。
もっとも、 連勝が破られていない限り、 ポジションの量を半分にする方法のほうが、はるかに望 ましい選択である。
うまくいっている時は、確かに調子がよいのである。 取引の頻度を減らすことによって調子を狂わせる必要はない。
取引の頻度を減らすべき時は、 連勝の後、 2連敗した時である。
DT05-61 ➡ 第6の大罪―間違った勝ち方をすること
誠実に、そして高潔に稼ぐことができるということは周知の事実である。 他方で、犯罪すれすれに、そして不誠実に稼ぐこともできる。
結果 として稼いだマネーは全く等しいかもしれない。 しかし、 稼ぐ手段は大きく異なるのである。 これは古くからの疑問を再考させる。
つまり、 「結果よければ、すべてよし」 なのかという疑問である。 言うまでもなく、 答えはノーである。
心臓外科の医師もドラッグの売人も多くを稼ぐ が、彼らを同列に扱うべきではないだろう。
この概念はトレーディングの世界においても当てはまる。 初心者の多くは、マーケットにおいて間違った勝ち方をする可能性があるというこ とを理解していない。
例えば、 あるトレーダーが損切りを遵守せず、 結果的には利益を上げることができたとしよう。
損失を計上しなければな らなかった取引であるのだが、 「結果」 として利益を上げることができたので、このトレーダーは損切りを遵守しなかったことに喜びを感じる のである。このトレーダーは自分が自らに対して罪を犯したこと、そしてそれに対する天罰が待っていることには気づいていない。 このトレー ダーは間違った成功を収めたわけであり、遅かれ早かれ、この労せずして得た利益をマーケットは取り戻しにかかるのである。
このトレーダーが次にストップロスを誘発しそうな状況に直面した時、 どのような行動をとるだろうか。 もちろん、 再びストップロスを 無視するのである。
そうしない者はいないであろう。 前回はストップロスを無視することによって利益を上げたのであり、 今回もそれに倣わ ない手はないのである。
しかし、前回のように株価は反発しないかもしれない。 今後数週間にわたって下落し続け、大損するまで下落し続ける 株を買ってしまっているのかもしれない。
間違った稼ぎ方をすると、 それが癖になり、 無責任な行動をとるようになることを忘れてはならない。
トレーダーが間違った方法で利益を上げた場合には、そうして得た利益以上の金額を失うまで間違ったアプローチを続けるのである。
マーケッ トは不思議な存在である。 利益を上げる価値のない者が利益を上げることを嫌うかのようである。
正しい方法で勝つように心がけよう。間違い なくそのほうが長続きする。
POINT
熟練したトレーダーは幸運を期待することはない。
自らが失敗した場合、あるいは誤ったトレーディングを行った場合、 そこから何とか利益 を得ようとはしないし、 また利益を得ることができたとしてもそれを喜ぶこともない。
むしろ、自らの技術によってではなく、幸運によって利 益を得た場合には、 彼らは敗北感を味わうのである。
真の勝者はマーケットにプレゼントなど落ちていないことを十分に理解している。
暖かい プレゼントに見えるものでも、それは冷たい債務の化身であり、莫大な金利を払って返済しなければならないものなのである。
成長途上にある トレーダーは利益を上げる機会があまりに乏しいので、いかなる手段を講じてでも利益を得ようとする。
初心者は労せずに得た利益を子供じみ また、意味のない歓喜の声をもって迎えるのである。 勝てる見込みのない取引で勝ったのだから、 彼らにとってその利益はタナボタなのだ。
彼ら は苦境を乗り越え、 狐との騙し合いに勝ち、 危険の牙を逃れたように感じる。
しかし、自らの技術によって勝ちとったものではない利益は自分 のものでないということが、 彼らには理解できない。
間違った行動により得た利益は、 利益でも何でもないということが彼らには理解できてい ないのである。 その利益は、 鮫のような取りたて人からの借金というわけだ。
いずれは借金を返済せねばならず、 時には血を流すこともあるか もしれない。 正しい行動と正しい手法によったとしても、 常に利益を上げることはできない。
しかし、明らかなことが1つある。 繰り返し間 違った行動をとれば、最終的にトレーダーは破滅する。
債務を取り込んではならない。 正しい方法で勝つことを肝に銘じてほしい。
DT05-62 ➡ 間違った勝ち方をする罪をいかに排除するか
この大罪から身を護るための簡単な手段を以下に示す。
- 取引に勝つたびに取引の内容を吟味する。
具体的には、買い入れ、当初のストップロスの設定、待ち方、 資金管理、売却などに ついて、失敗、ルールの逸脱などがなかったかどうか確認するのである。
もし、 何らかの失敗が見つかったなら、その取引を失敗と位置 づけ、トレーディング日誌に次回に修正を要するポイントについて書き記しておくのである。
問題の根源は実際には勝っていない取引と 勝った感覚を関連づけてしまうことにある。 取引に関して勝った感覚を持つ場合には、 それが真の勝ちであることはほとんどない。
自分 の行ったことは正しかった、よいことであったと自分を納得させようとしているだけなのである。 これは間違った行動を助長するし、失 敗を繰り返すことを促す。
言うまでもないが、 失敗はいずれトレーダーに報復するのである。
2)希望を持つこと (Hoping)と保有を継続すること (Holding) という2つの邪悪なHは、 しばしば間違った勝ち方につながる元 凶となることを認識してほしい。
マーケットが非常に強い上昇相場である時には、希望を持つことによってもうまくいく場合が往々にし てある。事実を正面から認識しよう。
満潮時には、すべての船の位置は高くなるのである。 急速な上昇相場においては、失敗を犯したト レーダーでも生き長らえることができる。
マーケットが損失を消し去ってくれるからである。 しかし、こうした救いの手が何度も差し伸 べられると、
トレーダーは「砂に頭を突っこんで困難な状況が過ぎ去るのを待つ」というやり方が、 含み損を抱えている時の正しい方法であると信じるようになってしまう。
この誤った認識は、 静かにトレーダーの体内に広まってトレーダーを蝕んでしまう正真正銘の毒で ある。マーケットが敵意を現した際には、 苦労を伴わない利益のツケを払わされるのである。
この請求金額は非常に大きく、トレーダー は破産に追いこまれるのが落ちである。 そして、 その後、 彼らの名前をマーケットで聞くことはない。
2つの邪悪なHがトレーダーを 破滅に陥れることを知っておくことは、少なくとも邪悪なHを封じる1つの方法である。
DT05-71 ➡ 第7の大罪―正当化
以下に示すシナリオの下で、 トレーダーがどのような失敗を犯したかがわかるであろうか。
日中足チャートで、 いい形が形成されつつあることを確認したトレーダーは興奮していた。
すべてのパズルが1つになっていくようであっ た。ストップロスを設定した支持線近辺で出来高を伴ったリバウンドが起こりつつあった。
非常に基調の強いマーケットで、午後に入って横 ばいが続いていたが、 急速に動きが見えてきた。 トレーダーは買い注文を出し、 それは執行された。
瞬間的に値を上げたものの、 すぐに株価は 下落に転じた。含み益は一瞬のうちに消え、 株価は買値近辺で方向感のない状況である。
「いったい、 何が起こっているのか」 と、 トレーダーは考える。 午後も遅い時間帯の上昇も弱々しく、 マーケットは明らかに勢いをなくしてい る。
しかも急激に。 ストップロスは間近である。 トレーダーは、完璧に思えた銘柄が下落している理由を探しながら株価を詳細に検証し始め る。
何かニュースが出たのかをチェックし (ニュースは何もない)、 その後、 日足チャートをチェックする。 「そうか、 日足で見れば問題はなさ そうだ。
非常にいい形をしている」 「本日の安値より低い水準にストップロスを下げればよいのだ。 そうだ。 そこが割れる可能性は低い」。
完壁に思えた状況にもかかわらず株価は下落を続け、10分後には新しいストップロスを執行し、 トレーダーは投資資金を根こそぎ失ってしま うのである。
トレーダーはイライラしながら、 この瞬間にいくら損をしたかさえもわからなくなっている。
このトレーダーの行動のどこに問題があったのか。 トレーダーがマーケットの勢いが細っているのを見極められなかったことだろうか。
必ず しもそうではない。
このトレーダーは以下の3点で致命的な失敗を犯しているのである。
1)時間軸を変更したこと。日中での買い入れの水準、日中でのストップロスを含め、日中足チャートに基づいた戦略を立て、それ に基づいて行動していたとしよう。
これを途中で日足チャートに時間軸を変更し、 ストップロスも日足チャートに基づいて調整し、当 初の計画を完全に変えてしまう。
この場合、 当初のリスクとリターンの関係は、トレーダーに不利な方向に歪められることになる。
- 取引計画を立てながら、 その計画を実行できなかったこと。 時間軸の長短にかかわらず、 当初の計画を守ることは極めて重要であ る。
計画に従って取引ができなければ、マーケットのなすがままになってしまう。 そして、 効率的に取引するために必要な自信が失われ ていくのである。
- 行動を正当化したこと。 上に述べた2つの失敗の心理的な背景である。 時間軸の変更あるいは当初計画の変更を正当化すること は否認の一形態であると言える。
つまり、 現実に生じている事象の否認である。 いかにマーケットの環境が悪くても、誠実であれば、た いていのマーケット参加者には勝つことができる。
ほとんどのマーケット参加者は、内面からそのような強さを引き出すことができず、 損失の原因を自分自身に求めるのではなく、 誰か他の人間や現象に転嫁することによって楽に生きようとする。
POINT
マーケットに対して知的なアプローチをしようと思うならば、 個々の取引について十分な計画を立てることが重要である。
負けているトレー ダーのほとんどは、 どのように取引計画を立てればよいのかといった知識もないままに息切れせんばかりの勢いで行動する。
また、 取引計画を 立てながらも計画に沿った行動が取れないことは重大な過失である。
何をすべきかを理解していながら実行できないのならば、知識を持ってい る意味がない。 マーケットにおいては、 そういった者への報いは損失と決まっている。
物事を正当化することは、その元凶であるし、またその 他多くの罪の元凶でもある。
たいていの人々は人間の性質上、必要以上に楽観的になりがちで、 損失や苦痛を伴って終わることに関しては抵抗 感が強いものである。
行動すべき瞬間が来ても、 多くの人々は決心することができず、 飛び出す勇気を持てないのである。 したがって、彼らは 物事の正当化を始めるのだ。
これは正しい行動から自らを逸脱させ、結果として、トレーダーは永遠にトレーディングから締め出されることになる。
DT05-72 ➡ 正当化の罪をいかに排除するか
以下に示す2つのステップを踏むことによって、正当化を排除、 あるいはコントロール可能な状況に置いておくことができる。
1)まず、トレーダーは自分が正当化を行っているかどうかを知っておく必要がある。 自らが正当化を行っている兆候としては以下の 3点が考えられる。
(a)「なぜ」株価がある固有の動きをするのかを自問自答し始めること。 何が株価を動かしているのかはトレーダーの取引計画と は何ら関係がない。
取引計画が、 株価が20ドルを割り込んだら売却するというものである場合、 なぜ株価が下落したかを知ることには 意味がない。
トレーダーのとるべき行動は、 まず売却し、 その後で理由を考えることである。
(b)ニュースをチェックすること。 ある特定の銘柄に関するニュースを常に最新なものにしておくこと自体は悪いことではない。
しかし、ニュースをチェックする理由が計画していた行動を延期するためであるならば、それは現実逃避以外の何ものでもない。
© 「かもしれない」という観点で物事を考えること。
ストップロスや目標株価が近づいて行動せざるを得なくなった時に、 「かもしれない」という表現を使い始めたならば、 不確実性が優位になっている。
ほとんどの場合、 取引の途中で行動を変えるよりも、 あら かじめ決めておいた取引計画に従って行動するほうが、望ましいのである。
あらかじめ決めておいた計画に従って行動することが、 必ず しも常に最良の結果をもたらすとは限らない。
しかし、その結果として、トレーダーには欠かせない資質である規律を強化しているので ある。
トレーダーが正当化する兆候をみせたならば、以下に述べる行動をとるしかないであろう。
2)ポジションを手仕舞う。 これは厳しく聞こえるかもしれないが、これまでの経験から、正当化は好影響よりも悪影響のほうが数段 大きいと確信している。
すべてのポジションを手仕舞うことに抵抗があるのならば、少なくとも半分は手仕舞うべきである。
端的に言え ば、ポジションを持ち続ける理由を探しているのならば、その理由がないことは明白である。
理由を探すということは自分では理由を 持っていないということなのだ。 明確な理由もなくポジションを保有しているというだけで敗者である。
DT05-73 ➡ どのようにして悪魔を探し出し、 やっつけるか
ヨギ・ベラ(ニューヨーク・ヤンキースの伝説的名捕手) は 「私は、自らが間違ったことを確認したくはない」 と言った。
これは素晴らしい 人物による、 素晴らしい指摘である。 この名監督に株式市場の経験があるのかどうかは知らないが、 彼の言葉はトレーディングという困難な ゲームに適用できるものである。
トレーダーは、失敗や損失には2種類あるということを常に念頭に置いておかなければならない。
1つめは平均の法則に基づくもので、避け ようのないものである。2つめは7つの大罪に基づくものであり、 トレーディング計画の執行ミスに基づくものである。
トレーダーは、この事 実を認識しなければならないばかりでなく、 統計的に避けられない要因による損失と、 「大罪」 に基づく損失を区別することが重要である。
損失は常にトレーディングの一部分を構成するものであることを忘れてはならない。 我々がいかに知識を身につけようとも、 負けは常に存在 し続けるのである。
トレーダーとしての目標は損失を完全に回避することではない。 頭を使って損失をコントロールすることであり、統計的に すべての取引で勝つことはできないという現実に従うようにすることである。
しかし、 トレーディングにおいて間違った負け方は根絶しなけれ ばならない。
換言すれば、 我々は常に 「大罪」 から湧き起こってくる失敗という悪魔を「捜索し、やっつける」 作業を続けなければならない。
この悪魔は我々を破滅させる力を持っている。 以下に我々が社内トレーダーに指導し、かつ実行を義務づけている指針を示す。
これらは読者の ためにもなると確信する。
【準備】
「良い」 損失と 「悪い」 損失の区別を始める前に、自らの進歩を確認しやすくするため、 トレーディング日誌のつけ方を工夫する必要がある。
以下の3つのステップはそれを容易にするものである。
- トレーディング日誌のページの真ん中に線を引き、 2つの欄をつくる。
2)左側の欄には、 「すべての取引で勝つことはできない」 とタイトルをつける。
- 右側の欄には、 「殺すか、 殺されるか」 とタイトルをつける。 この意味は理解できることと思う。
これで何よりも重要な 「区別」 する作業に入る準備ができた。 これを 「良い損失と悪い損失を区別する」 作業と呼ぶことにする。
【良い損失と悪い損失の区別】
- 負けた取引の詳細を入念に検証する。 買い入れ、 取引の管理、 つまりストップロスの置き方、 ポジションの手仕舞い方などである。
- 検証し終えたところで、 失敗が見当たらないようであれば、
その取引を 「すべての取引で勝つことはできない」 の欄に記入し、次の取引に移るのである。これらの 「失敗のない」 取引については今のところは無視してかまわない。
- 検証し終えたところで、 回避可能であった失敗があったならば、その取引を 「殺すか、 殺されるか」 の欄に記入する。 その際、 1 つ1つの失敗を区別するため、 さらにカテゴリーを分ける。
カテゴリーの例としては「遅すぎた買い入れタイミング」 とか、 「早すぎた 売却」とか、「ストップ・ロスの無視」 といったものが挙げられる。
第6章においても類似の作業を示してある。
DT05-74 ➡ 自分を苦しめる悪魔の親玉をやっつける
連敗を喫した後、 損失の原因の中でも1つのカテゴリーがほかよりも多くなっていることに気づくはずである。
これを発見することができ たならば、 自分を苦しめる悪魔の親玉を見つけたことになる。
これを即座に、 情け容赦なく抹殺しなければならない。この時点でなすべきこと は頻繁に犯す失敗を完全に根絶することである。
いかなる代償を払っても、いかなる労力を使っても、 抜かりなく、 この失敗に終止符を打たな ければならない。
この失敗が、 「ストップ・ロスの無視」 によるものであるならば、ストップロスを遵守しなければならない。
ストップ・ロ スを遵守するためには早期に売却しなければならないのであれば、それを断行するのである。 さっさと売るのである。
その後、 何をしようとも、 二度とストップロスを越えてはならない。
数日間、 数週間、 あるいは数ヵ月にわたって、 「ストップロスの無視」 による損失をほかの要因 による損失よりも少なくしなければならない。
まず、 最初の要因による損失の頻度が少なくなったならば、 失敗の頻度の多いカテゴリーに移るのである。
この作業を生きている限り続けれ ば、最終的には、抹殺すべき悪魔を選び出す作業が不要になる。
ただ、 その時に存在する悪魔をやっつけるだけでいいのである。